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Trend & topics トレンド&トピックス12 『井戸』からひろがる地域コミュニティ

緊急・非常時のみならず日常生活に利用する人が急増中

東日本大震災以降、緊急時の避難場所、家族の集合場所、食べ物の備蓄など、非常時のくらしについて検討しているご家庭が多いと思います。その中でも水道・ガス・電気といった、生活インフラに対する心配は小さくないはずです。
 
このところ、自宅で掘る『井戸』が注目されているのをご存知でしょうか。地中から湧き出る自然水を、水やりや洗車、トイレ、お風呂といった大量に水を使う場面や、飲用や炊事のために利用するご家庭が増えているのです。一度掘ってしまえば井戸から汲み上げた水はタダ。ポンプにかかる電気代も微々たるものとあっては、井戸に魅力を感じる方も多いでしょう。

気になる工期、工事費は?

それでも「お金がかかるのでは?」「自分じゃできないし」といったイメージが強いのも事実です。インターネットで検索してみても、50 万、100万、高いところでは300万円といった工事費用が目に飛びこんできます。「一般的な井戸の掘削は、掘り始めてから水が出るまでどれぐらいの手間がかかるかわからないため、高価格になりがちなんです」

最近の井戸掘り事情についてお話を伺ったのは、『しろい古里保存会』の会長 押田春男さん。同会は現役をリタイアした人たちが中心となって、千葉県白井市を拠点に井戸掘りをおこなっています。まず、作業の流れを整理してもらいました。「依頼を受けた後、打ち合わせの手間などを省くために住所地図から地質を調べ、水が出そうか否かを確かめます。作業当日は朝の8時頃から作業を開始して、たいていの場合、13~14時には水が出てきますね。キレイな水が出始めるのが16時ぐらい。ポンプの設置まで入れて、たった1日で全工程が終了します」

さらに驚くのは工事費の安さです。同会では一律25万円で井戸掘りを請け負っており、別途汲み上げ用ポンプを用意してもプラス13万円。「『安すぎる』と不安がられたこともあります」と笑う押田さんですが、依頼主からは感謝されるばかりで目立ったクレームもなく、“禁止地域を避ける” “内径25㎜以下のパイプを用いる” “飲用に関する水質検査は自己責任でおこなう” など、最低限の決め事を遵守すれば法的にも問題ありません。

穴を掘った後に塩ビパイプを差し込んで井戸掘り作業は終了。依頼主の好きなときにポンプを設置できます。50~60年はノーメンテナンスで問題なしとされています。
写真奥に並んでいるパイプをつなぎながら、先端に取り付けたドリルビットで砂岩や砂礫を砕いていきます。

ブルキナファソでの井戸掘り風景。電気のない村でも、手押しポンプを使ってきれいな水を汲み上げられるようになります。子供たちも大喜びです。

井戸掘りを始めたきっかけ”

同会が井戸掘りを始めるきっかけとなったのは、旧来の知人である日本ブルキナファソ友好協会の理事長 松山則政さんからの相談でした。「国際協力援助事業の一環として、アフリカ西部のブルキナファソという国で井戸掘りをすることになりました。まずはアメリカから井戸掘り用のボーリングマシンを2台取り寄せ、千葉県内で試し掘りをした後に現地に飛びました」

日々の食事や医療面において、きれいで豊富な水というのはなによりの宝物。さらにはそれが一過性のものではなく、恒常的に利用できなくてはならないということで、松山さんは新規で掘るのと同時に、修理方法やそのための道具を現地の方々に渡してきたといいます。「井戸が素晴らしいのは掘って終わりではないところ。メンテナンスをきちんとすれば、50年でも100年でも使えます。日本でも井戸のそういった点に興味をもった方々から、特に3月以降、連絡をいただくようになりました」

気になる工期、工事費は?

現在は1カ月に150件もの問い合わせ、注文が届いている状態だといいます。ただ、10名のメンバー全員が本業を持っているため、多くても週に2~3回しか活動できず、すべての依頼に応えるというのはなかなか難しそうです。「プロ集団だという自負はありますが、あくまで〝趣味の延長線〟」と言い切る押田さんと松山さんは、今後もビジネスとして活動範囲を広げていくつもりはなさそうです。それでもこれまでに培ってきた技術や経験、人脈をそのままにするのはもったいないと、世代交代の良策を考えているところ。

今回話を伺ったのは、以前作業をされた団地の防災用井戸の脇でした。時間が経つにつれ、一人二人と団地の人たちが集まってきて、「あっという間に水が湧いてきてびっくりしたよ」「水やり、洗車に大活躍だわ」といった“井戸端会議”に華が咲きました。

遠くの親戚より近所の他人。有事の際にはなおさらです。緊急事態を想定して井戸に注目するのであれば、井戸そのものと同じく、井戸によって生まれる地域コミュニティが大きな助けになるのではないでしょうか。

井戸が地中から汲み上げるのは水だけでなく、地域に根付いた優しさや温もりなのかもしれませんね。

中庭や公園、花壇の中などの狭い場所であって、1坪(2畳)ほどのスペースがあれば井戸掘りは可能です。
約300世帯が住む団地の防災会の方々からの依頼を受け、 非常時用に掘った井戸です。本格的に活動を始めて以来、 3年間で170本の井戸を掘ってきました。

〔取材協力〕 しろい古里保存会 代表 押田春男さん http://shiroi.main.jp/
認定NPO法人 日本ブルキナファソ友好協会 理事長 松山則政さん http://jbfa.org/

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